新型コロナ禍も2年が経過し、当初の入院隔離騒動から自宅療養が多くなった今、漢方薬の出番と効果が注目されてきた感があります。先日もある患者さんを治療しながら「インフルやコロナも漢方薬で対応できるんだよ」という話をして数日後、当の患者さんから「6歳の息子が感染して間もなく解熱したのですが、今度はママとその母が高熱を出し始めました。僕の親が食料を届けてくれるということなので、先生のところに寄ってもらいますのでお薬をお願いします」という電話。早速当座のお薬として、三種類ほどお持ち頂いて、まず柴葛解肌湯(さいかつげきとう)をすぐに服用して解熱後の状態でまた判断しましょうということにしました。翌朝「解熱しました。次に何を飲ませましょう?」という電話を頂きました。様子を伺った上で、柴葛解肌湯をもう一包服用したあとから柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)を一日飲んでいただきその後に補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を数日服用して頂くことにしました。それでママはすっかり良くなり、さすがにおばあちゃまは少し咳が残るということなので、麦門冬湯(ばくもんどうとう)を後日届けてもらいました。

幕末維新の頃に浅田宗伯という有名な漢方医がいらっしゃいました。藩医から将軍家の御典医にまでなり、維新後は宮内省の侍医として活躍しながらも、西洋化を急ぐあまり漢方医学を廃絶しようとする明治政府に対抗し、日本漢方の存続に尽力した方です。その御弟子の木村博昭先生は、スペイン風邪の流行した際には、この柴葛解肌湯をはじめ様々な処方を駆使して手掛けた患者さんからは誰ひとり死者を出さなかったという逸話があります。百年前のパンデミックです。当時の世界人口の約3分の1の5億人が罹患して約1億人が死亡したと言われています。この度のコロナ禍以上の恐怖だったろうと思います。その中で漢方薬を駆使して患者さんの命を守る・・・。頭が下がる思いです。

 

州凰堂金坂鍼灸整骨院