以前にも書きましたが、日々診療していて似たような症例が続くことがよくあります。このところ多かったのが、めまいや耳鳴りや耳の閉塞感を訴えて来院される患者さんです。耳鼻科領域でも、めまいや耳鳴りの病因を捉えることが困難なことも多く、難渋している方も多く見受けられます。確かに耳鳴りは治療してみないと効果が出るか分からないこともありますが、めまいや耳の閉塞感は鍼灸治療がよく奏効する症状です。

 8月初旬に来院されたご婦人は、5月からめまいと耳の閉塞感が出現し、当初耳鼻科にて検査投薬を受けましたが改善せず、漢方薬局の先生に漢方薬を処方してもらってからめまいが軽減し、日常生活を支障なく送れるようになったのですが耳閉感には変化がなく、8月下旬にロンドンで結婚式を挙げるお嬢さんのもとに行くのに飛行機に乗るのが不安で堪らなかったそうです。薬局の先生の「鍼治療もいいかも」という言葉に促されて当院を探してみえました。拝診しますと、肩こりもあるようで僧帽筋もそこそこ張っていますがそれ以上に側頸部の筋肉(胸鎖乳突筋や斜角筋)の硬さや緊張が目立ちました。耳鳴りや耳閉感のある方に多くみられる現象です。そこの部分を中心に治療を施し、2日後に再来院して頂いた時にはほとんど閉塞感はなくなり、それまでは時々あった天候変化による症状悪化も、以後渡英するまでの数回の来院中一度もなかったため自信を持って旅立たれました。ご主人のイギリスでのお仕事も兼ねての2週間以上の滞英中、疲れは出たものの耳の症状は全く出なかったそうで、僕が指示した航空用の耳栓も一応離着陸の時だけしてみましたと9月中旬過ぎに帰国して喜んで報告くださいました。

 そのご婦人がまだ滞英中にあった薬局漢方研究会のテーマ処方が「滋腎通耳湯」。最近小太郎漢方から発売された腎の衰え(簡単にいえば加齢老化)から来る耳鳴りや聴力低下に効果のある漢方処方です。講師の先生が説明の中で「万能というわけではありませんが、鍼灸治療を合わせると効果的なこともあります」と仰っていました。講演終了後の自由参加のコーヒータイムに前述のご婦人の症例と、僕自身の突発難聴がステロイドと柴苓湯で早く完治したことなどをお話したら、薬学博士でもあり鍼灸師の資格もお持ちの講師は「やはり少陽胆経が関係するのですね」と経穴(いわゆるツボ)や経絡(臓腑と関連するツボのルート)をよく理解していらっしゃる方の会話でした。

州凰堂金坂鍼灸整骨院